第二話「夢・店舗銀行の見学に行く」

中田ゆき

 

白井はくと

ススキノちかくの銀行で働くサラリーマン。
38歳。最近いきつけのバーでよく寝てしまう。

マスター

バー【JM】のマスター。
甘いものに目がない。

中田ゆき

札幌の大学に通い、ちょうど就職活動の真っ最中。
はくとの夢の中に登場。

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「どこだ、ここは?」
まだ4月。札幌市内の風がまだまだ寒い。
息で手を温めようとしたとき、持っていた【ジョイフル酒肴小路 入店のご案内】
に気づいた。

「白井さん」
と、跳ねるような声で僕を呼んだのは、
先日バーで会った!ってわけではないが、出会った彼女だ。

「場所わかりました?」
と彼女、分かるもなにも、一体、ここはどこだ。
あるビルの前。見上げると【JOYFUL 酒肴小路】の文字。

SHUKO-KOJI

白を基調にした壁面に、品良くきらめく電飾。
大きなサイネージ画面には、このビルに入っているだろうお店の
説明が流れていた。

「じゃあ、見学にいきしょう」と僕の腕をとる。
見学?何の?誰が?、いくつかの疑問がうかんだが、
このまま腕を組んでいたくて、余計なことは考えないことにした。

清掃されている廊下。

大事に使われるな、このビル。
銀行マンのくせが出てしまった。
ついつい評価したくなってしまう。

「ここかな〜」と、扉をあける彼女。
「ん!?」
いや、誰かのお店じゃないの。勝手に入っちゃ、
と止める間もなく、ずかずかと入っていく。

「やっぱり、ここですよ」

モダンな洋風の装飾に明るい店内。
僕は赤を基調とした、レンガ調のタイルが気にいった。
けど、この空間はなんだろう、僕がイタリアンを始めるならぴったりな気もするけど。

「とりあえず、他のところも見てみましょっか」
ちょっと待って!理解がおいついていないって笑。
「これ、なんで新装されてんの?誰かが開業しようとして夜逃げしたとか?」
「何言ってんですか、これが店舗銀行のシステムじゃないですか、
誰でも新しいお店をジャスマックのノウハウを生かしながら開業できるって」
「えっ、このまま始めていいの?」
「もう他のところも行きますよ」
と、連れられるままに、他の店舗へ。
そこでも、おなじく、

手洗いも

トイレも

ガスレンジや作業台も

シンクも。

全部新品だった。どうなってるんだ?
僕のくたびれた靴が床と不釣り合いで、恥ずかしい。

「白井さん、どれがいいですか?もし二人でお店始めるなら私、メニュー書きます!ほら」

まだない僕らのお店のメニューを書いてくれる彼女。
僕が料理を作って、彼女が注文を聞いて、もくもくと夢が大きくなっていく。

「この釧路直送の海老とキノコのアヒージョはちょっと安い気がするし、
逆にしいたけ高くね?」
「でも私しいたけ好きだし」
「好きとかじゃないから笑」
彼女とこんな風に穏やかに店を作っていけたらいいのに。

「お客さん、お客さん」
「えーでも君が値段決めなよ」
「私が値段決めていいんですか?閉店です」
目の前にいたのは、太ったマスター一人だけ。
くそ、また夢か。
深いため息をつきながら【ジョイフル酒肴小路 入店のご案内】のパンフを眺める。

つづく・・・

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